1994年作、かなり使い込まれた両手鍋の修理 No.1416 

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    1416両手鍋基本形修理

     

    22年前に作った両手鍋ですが、良く使い込まれたうえに、強い空焚きで焼き鈍り、変形も起こしていました。大きさは直径が21.2cm、本体高さ8.4cm、最近のものではNo.4743 とほぼ同じ大きさです。焼き鈍るという状態は、銅の地金が高温になって柔らかくなり、冷えた後も柔らかい状態のままになることを言います。「鉄は熱いうちに鎚て」と言われるように、金属は一般的に高温では柔らかく加工しやすい状態になります。鉄は冷めると再び硬く戻りますが、銀や銅は冷えても柔らかい状態が維持されます。柔らかくなった銅をたたいたり曲げたりすると、硬くなり、鎚ち締めると言いますが、一般的には加工硬化とよびます。

     

    この性質を利用して、一度高温で焼き鈍した銅板を冷えてから手で持って、利き手の金槌で鎚ち変形させていく工程が、鍛造とよばれる作業です。一通り全体を鎚つと加工硬化で硬く、変形しにくくなりますので、再び高温に加熱し、焼き鈍ったものをまた鎚ち変形を繰り返します。深い形ほど、その工程を多く繰り返して目標の形に成形し、最後に何度か表面をきれいに整えると同時に硬く鎚ち締める仕上げ鎚ちの後、持ち手をつけます。強い空焚きは仕上げ鎚ち直前の焼き鈍った状態に戻っていることなります。

     

    今回の鍋はこびりつきや汚れをクリーニングすると、何度か空焚きしたようで、内側には銅地金の腐食が見られます(写真左上)。そのデコボコを少しでもならすために、少し強めに底の部分を鎚ち締めると、地金がいくらか伸びてきます(中段左)。底からの立ち上がりと側面も打ち締めますが、持ち手をはずすことが出来ないので、新しい地金から鎚つより難しい作業となります(右上)。今回は予想外でしたが、蓋も焼き鈍っていましたので、ツマミを取り外して鎚ち締めました。

     

    よく使い込まれた上に強い空焚きがあると、錫引きが容易にはできません。油に馴染んでいるのか、表面が変性しているのか、原因はよく解りませんが、融かした錫を表面に流して、のりの悪いところを削り落し、再度錫をひく作業を何度かくりかえします。特に今回は底の部分の腐食をしっかり覆うように、厚めに錫をのせました。最後に、一連の作業で汚れた外面をクリーニングしてから、いぶし色に変化させる硫化仕上げと、磨きで完成です。

     

    仕上がり寸法は直径21.4cm 本体高さ8.7cm 全高約22.5cm 全重2.01kg

    修理代は現在の新品価格の30%程度です。

     

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