銅器に銘を刻む 鏨とおたふく槌

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    鏨とおたふく槌

    戦後の一時期、民芸運動を中心に工芸制作の一部では「無名性」ということが言われました。貴族社会で使われる工芸品と違い、一般庶民が日常使う道具は「名もない職人」によって作られてきたことから、現代の作り手も名前を売り出して価格を上げて、生活から遊離した「作品」になることを戒める意味だったと思います。しかし、その民芸運動を展開していたのは「有名作家」「有名評論家」でありながら、一般の職人に無名性を説くと言う矛盾も感じられました。周囲を見れば、余程のまがい物、クレームから逃げたい粗雑な製造物でない限り、量産品には製造元、ロゴが入っています。銘を入れたことで特別高く売れる、なんてことになってもいないのに、銘を入れるかどうか悩んでも仕方ありません。そして今日に到るまで幸か不幸か、その悩みに苛まされることはありませんでした。

     

    酢重/銘上の写真で扇状に並べてあるのは鏨(たがね)と呼ぶ道具。先端があまりノミほどは鋭くない両刃で、細い線を刻む「毛彫り鏨」と呼ばれるものです。左の三つは鏨用の鉄棒を好きな形状に研いで作ります。右の二つは切り鏨で、ここでは直線の彫りに使っています。鏨を鎚つ頭の短い槌は「おたふく槌」とよんでいますが、さて若い人にその語源がイメージできるでしょうか。

     

    右の写真は酢重鍋の銘入れ。これはレストランのお客様にも見えるように少し大きめで、一字が14mm四方。あまりひどい失敗をすると、それまでの何日間もの仕事がフイになりますので、小さな作業ですがかなり緊張します。サインペンで下書きして、切り鏨で細くなぞり、鈍角の毛彫り鏨で肉付けします。

     

    通常の銅器や銅鍋にはシンプルに「寺山」とだけ、5mm四方ぐらいの字で刻みます。こちらは何千回もやってきた作業ですので、下書きもなしでトントンと。目立たせることもなく、さりとて隠すものでもなく、さらっとどこかに刻まれています。

    寺山/銘

     

     

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