銅蓋につく真鍮のつまみ/工程と形について The brass knob of copper pot lid / About the shape and the production process.
鍋の銅蓋のてっぺんにつく「つまみ」。市販品の場合、家庭用では木やプラスティックで作られていることが多く、業務用では蓋の素材と同じことが多いようです。私も以前は銅で作っていましたが、持ち手を銅から真鍮に変えた頃から、つまみも合わせて真鍮にしました。無垢の丸棒から造りますが、真鍮は銅より硬く、加熱状態でも鎚ち延ばすのに時間がかかります。冷えた状態で鎚つ鍋本体と違い、熱いうちに鎚つためヤットコで掴んで作業しますので、あまり細やかな仕上がりにはなりません。もちろん、際限なく時間をかけられるのであれば、「芸術的つまみ」を作れるでしょうが、つまみのために価格をウン?万円高くするわけにもいきません。もっとも、いくらかかってもいいから「芸術的つまみ」を作ってほしいと言われたら、ハタと考え込んでしまいそうです。
写真右は素材となる真鍮の丸棒、その右は鎚ち延ばして丸くし継ぎ目を銀ロウで溶接した状態、さらに右端の芯金(鉄の丸棒)で形を整えてから表面を鎚って鎚目をほどこし取り付け穴をあけた状態です。写真左、右の工程で仕上げたつまみを蓋に中心に銅のリペットで取付て、隙間に錫を流します。リペットだけではツマミが回転しますし、隙間に入った水が錆のもとになりますので、錫を融かして流すのですが、市販のものではこの工程を行っているものを見たことがありません。
真鍮は銅ほど熱伝導が良くなさそうですが、それでも直接手で持つと火傷します。鍋つかみやタオルで持ち上げやすい形状にしないと危険です。この円形の形は、一種のトレードマークでもありますが、急いで蓋を開ける時には菜箸でもおたまの柄でも通して持ち上げられます。これは意外に便利。収納するにはちょっと邪魔ですが、しまい込む暇がないぐらい使い込んでいただければと思っています。
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- 2017.01.07 Saturday
- 鍛造銅器とは About Copper Works
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