野生を生きる動物の冬 元気なキツネ、痩せたタヌキの死。
焼け石の隙間で朝日を受けて輝くユキノシタには、寒さの中で生き抜く強さが満ちています。紅葉した葉もあれば、緑のままの葉も。生き残っているものには、環境に適応した何かの働き備わっているのでしょう。あるいは、その場所により適応した別の種が、偶然存在しなかった、運ばれてくることがたまたまなかったからかもしれません。「俺様が一番、ここは俺の場所だ」といって占有しているのではなさそうです。
世間がクリスマスイブと言っている夜、くるまの前をキツネが通り過ぎて行きました。冬のキツネは毛が豊かで、夏に較べると二まわりは大きく見えます。夜の餌探しか、パートナー探しか、力がみなぎっている歩き方です。そして冷え込んだ翌朝、道に若いタヌキが死んでいました。
3連休で田舎の道に馴れない運転者がはねたのかと思いましたが、よく見ると傷もなく血も流れていません。痩せ細っていて、餌がなく飢え死にしたのか、寒さで凍死したのか、いずれにしてももともと体調が悪かったのでしょう。田舎と言っても軽井沢では外で犬を飼う人は少なく、ましてニワトリを飼っている家はほとんどありません。飼われている動物の餌をちゃっかりいただく機会は少ないでしょう。ずっと以前、外で杭につながれている犬のまわりをキツネがグルグルまわって、怒った犬もグルグルまわって鎖が短くからまってしまい、動けない犬の目の前でキツネが餌を食べて行くという話を聞いたことがありました。タヌキはどんくさいと言われ、えさ取りの戦術に長けていることはなさそうです。夜、道の先方にタヌキがいると、ヘッドライトの明かりから出られないのか、必死に直線道路を走って行きます。道がカーブするとやっと脇の薮に逃れることができて、それまで呆れながら後ろを走りました。
植物や小さな動物を食べて生きる大きな動物。強いはずの彼らほど、どこか生きていくことの悲しさを漂わせています。「適者生存」という言葉はもともと The survival of the fittest. であり、直訳すると「最適者生存」です。生き残っているものはそれぞれ、その環境に適応する何らかの働きをもっているということでしょうが、それをひっくり返して、最適者、最も優秀なもの、強いものが生き残るべきだとすると、複雑で多様な環境に生き残っている多様な生き物を見失います。環境の変化に弱い貧弱な生態系になってしまいます。いかに強くても優秀であっても、もともと生き残る権利など存在せず、「強食者」ほど「弱肉者」の存在に依存して、かろうじて生き延びていると感じます。強食者だけの生態系は存在しません。まして人間の社会を静かな眼で見るならば、生きている者すべてが社会を支え継続させていることに気づくのではないでしょうか。
年末の忙しさの中でちょっとつぶやいてみました。ささやかに生き残ってきた仕事を支えてくださいました皆様、ともに来年も生き残りましょう。今朝は氷点下9度代で、一番の寒さです。
JUGEMテーマ:アート・デザイン
- 2016.12.29 Thursday
- 雑感 Short Essey
- comments(0)
- trackbacks(0)