両手鍋の持ち手、いろいろ
上段は私が作っている両手鍋の持ち手、下段は市販のものです。上段のものは真鍮の丸棒を熱しながら、鎚って加工しています。鍋本体との接合は、ドリルで穴をあけ、銅製のリベットでとめてから、本体との間に錫を流し込んでいます。この工程は全て手作業です。一方、下段の左側のものでは、持ち手は本体と同じ銅製。プレス機を使っているようですが、手作業かもしれません。中央と右側は同じもので、持ち手は真鍮の鋳造品です。型に融かした真鍮を流し込んで作ったものです。同じ真鍮でも、鎚つことが出来るものと鋳造用では成分が違います。本体とのとめ方はどちらも銅のリベットです。
持ち手と本体の間に錫を流し込むのは、補強のためだけではありません。隙間があると水分が残り、錆の原因になります。汚れも隙間に入って、洗ってもとれません。下段右は、修理を頼まれて錫引きするために加熱(250度より少し高温)したところ、隙間の油汚れが融け出して、流れた様子です。きれいに落して、磨き上げ、新品同様になった状態が中央の写真。通常、煮物汁物では100度まで、揚げ物でも200度程度ですので、普通に使う分には隙間の汚れが出て来ることはないでしょう。鍋の外側ですので、食べ物にも影響はありません。フライパンや中華鍋の内側にべったりと黒く焼き付いた油汚れは、やはり取り除いた方が良さそうです。
食卓に出したときや調理中に邪魔にならないよう、持ち手を鍋本体の上縁より下につけています。ちょっと持ちにくいかもしれませんので、大きめに鍋つかみで握りやすい形状にします。上段右のように、上縁より上につける場合は、小さめに作ります。この形状は洗いやすいかもしれません。たかが持ち手ですが、本体や蓋との釣り合い、デザイン性の問題もあります。持ち手で失敗すると、それまでの作業がフイになりますので、案外緊張する作業です。
JUGEMテーマ:アート・デザイン
- 2015.01.26 Monday
- 鍛造銅器とは About Copper Works
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