民芸展トークセッションで話したこと

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    ホンミスジとヒオドシ

    今日は久しぶりに新作をご紹介する予定でいましたが、展示会で10日ほど運動していなかったので、昨日は昼過ぎから町の健康施設は行って大汗かいてきました。消費カロリー1100kcal 。15km前後のラン二ングに相当する運動量でしょうか。施設の温泉に入ってから、東京のギャラリーに荷物を送り、夕方から作業場に入りましたが、作りかけた鍋は仕上がりませんでした。というわけで、今日も別の話題です。上の写真左側はホンミスジ。どちらがオスメスか判別できません。翅の表は地色が濃い焦げ茶、裏は赤茶色がかっていますが、模様は表裏あまり違いません。右は前の記事に載せましたヒオドシチョウ。裏は地味で表は派手。私のいい加減な推測ですが、ホンミスジは食草の葉を丸めてその中で幼虫が越冬します。ヒオドシチョウは成虫で越冬するので、休眠中の安全のために翅を閉じると目立たない姿になったのではないでしょうか。

    今回の展示では地元という事もあり、会場を管理する吉川館長には、この仕事を始めたころ佐久の民芸協会でお世話になった歴史もあり、民芸館を拠点に活動する信州宮本塾の学習会という企画で工芸について語り合う集まりを持ちました。そこで私が中心的に話したことは、鍋を「工芸として作る」ことについて、なぜホームセンターで売っている鍋の100倍の価格になるのか、デパートで売っているちょっといい鍋の10倍の価格になるのか。10倍100倍の価値があるのだろうか、という話題でした。会場で参加した方々はそのような突っ込んだ疑問は遠慮して聞きませんので、私からの問題提起です。

    私は以前から、工芸とは幻を売る仕事だとたびたび話してきました。もの作りの仲間達からは嫌われます。自分たちは確固とした「もの」、人の暮らしに役に立つ機能性の高いものを作っていると主張されます。使い手からはエッと怪訝な表情が返ってきます。やはり、使いやすく便利な道具を選んでいると思われているようです。もちろん道具である以上は機能性が求められるのは当然です。「もの」としての良さには、機能性、多用途性、耐久性や修理可能な事など、いろいろあるでしょう。ホームセンターの500円や1000円の鍋に較べると、たぶん10倍の価値は何とかクリアーできるのではないかと、不遜にも考えています。10倍の値段で売っているデパートの鍋よりは、「もの」として優れているでしょう。

    では100倍の価値があるか、デパートの鍋の10倍の価値があるのか。現実にはその値段でも何とかお客様にお買い上げいただいています。(その価格でも私は低所得層なのですが) その部分が、工芸の「まぼろし」なのではないでしょうか。私の作る鍋の多くは、食卓に出して使う事を想定しています。台所では食事を作る道具なら、食卓では食事を演出する役者です。前者が機能性なら後者はデザイン性と言えるかもしれません。鍋を作る側にとって、前段が「工」で後段は「芸」と言うことになります。「芸」と言うのは、絵画でも文学でも演劇・写真写真・映画でも、すべて幻です。幻を見るなら、楽しい思いをしたい、あるいは鋭く問題をえぐり出すエキサイティングな幻を見て、現実の暮らしに戻りたい。幻に騙されるとこと、高い表現力の芸に騙されたい、そんなスタンスで芸に触れたいと思います。

    鍋と言う道具を買うと、絵画などと違って、買われた方が今度は道具と食材から料理を作る作り手にかわります。その先には自分自身、家族、友人、レストランならたくさんのお客様が、消費者として存在します。料理も幻を作る芸です。栄養摂取という機能性の部分だけなら、食材そのまま、あるいは錠剤やチューブの食もあります。味や見た目やタイミングなど、口に入り喉を通る一瞬の幻で、その行き着く先は・・・。料理こそ夢まぼろしです。料理を作る人は演出家です。気合いの入った芸を演じる役者としての道具。機能性の先にある幻こそが価格の根拠、お客様が期待する部分なのではないでしょうか。数字化できる機能性に対して、その部分は一つ一つが気が抜けない仕事になります。
     
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