玉子焼き器は折り曲げて作ります

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    玉子焼き器途中

    ほとんどの鍋は、銅板を焼き鈍して、内側を丸い頭の金床のあてて外側から金鎚で鎚ち、絞り込んでいきます。技法で異色なのがコーヒー・ドリッパー玉子焼き器で、地金を折り曲げ、リベットでとめて形を作って行きます。後からあまり鎚つと変形しますので、成形する前に鎚目をつけます。パーツは上の写真にある3点以外に、黒檀の持ち手を後から削り出します。

    鍋の場合は最後に仕上げ鎚ちで、しっかりと地金を硬く締めますが、玉子焼き器では折り曲げる際に割れが入らないよう焼き鈍った状態で成形します。地金が充分厚いので、ぶつけたりしても変形することはありませんが、成形後に角や縁は鎚ち締めておきます。写真は外側から撮っていますが、裏面は既に錫引きしてあります。コーヒー・ドリッパーでもそうですが、組み立てて作る場合は隙間にしっかり錫が入るように、あらかじめ錫引きして組み立てた後から再度、多めに錫を流し込みます。表面の変色は錫引きする時の加熱によるもので、錫を施した後から酸で磨くことはできません。

    絞りこんで少しずつ形を作っていく鍋では、同じ工程を何度も繰り返しますが、折りたたんでつくるばあいは、複雑な異なる工程を次々順番にこなしていきます。そのため、段取りを最後まで見通せていることが重要です。前の工程に戻って修正することが出来ない場合もあります。絞り込んでいく鍋は、いくつか並行して作っていく方が能率が良いのですが、玉子焼き器の場合は、各パーツが揃ったら一気に組み立てます。

    私の仕事、アートか工芸か職人芸か、分類してレッテルを貼ることに意味があるとも思っていませんが、いずれにしても仕上がったもので勝負ですから、技術や工程を紹介するのは本来するべきではないと思ってきました。ホームセンターで売っている500円の鍋でも使えないことはないのですから、こんな高価な鍋を作る以上、機能性の高さや修理が可能なだけではなく、使う楽しさ、わくわくする感じを提供したいと思っています。夢や幻かもしれませんが、そうであればなおのこと、いい夢を見ていただきたい。直感的に感じ取ってくださる方もいますし、合理的に納得してくださるお客様もいます。手品師や錬金術師に通じる仕事ですが、たまには「たねやしかけ」をお見せします。
     
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